もう消費すら快楽じゃない彼女へ [田口ランディ]
27編のコラムからなる本書。
田口ランディって、ずっと男って思ってました。
読んで感じたのは「ホンモノの言葉」。
彼女、色んな人生経験を積んでいます。その経験に裏打ちされた、単なる取材では到達し得ない部分を書いているな、と。
新聞専売所の項など、まさに好例。働いて、そこにいた人たちを見ていたからこそ「わかる」。
「夜明け」
28年間盲目の人が、手術で視力を回復する話。
読んでて、「見えないほうがいいのにな」と思った。それは、「見えなくていいものも見える」ことが、彼に取ってどれだけのマイナスを与えるか、という観点からそう思った。
しかし実際は、「見えなくていい」という以前の問題で、「目から入ってきた光を脳に伝え、それが何であるかを認識する」訓練が、28年間全く為されていなかったために起こる戸惑い。それがあった。
自分の浅はかさを思い知った。
彼女の友人で在日朝鮮人のノリコ。
これがまた圧倒的パワーを持っていて、素直に納得させられる。
こういう人が近しい知り合いにいると、悩みが悩みでなくなることもありそうな。
コラムの時々に登場し、小気味良い持論を展開する。
現代社会には、一見不可解な事件が数多く発生している。そういった不可解な部分も、解きほぐしていくとそこには人間がいて、何かの理由なり背景がある。そこを書ききった田口ランディって。。。
他の著作も読んでみようと思います。
田口ランディ 幻冬舎文庫 ISBN4-344-40197-2