SSブログ
吉田修一 ブログトップ

ランドマーク [吉田修一]

舞台は大宮。画期的な「ねじれ」をデザインに用いた高層マンション。その設計士と現場で働く若い人足。物語の上では決して交わることのない二人の日常が入れ替わりで展開される。

長い長いネタ振り。いつドカンと来るのか?
若い作業員は、ネット通販でアメリカから男性用貞操帯を買って装着する。
設計士は、事務所でバイトする若い女と不倫をしている。
そして物語は淡々と、無骨に進行する。
物語の背景色は黒か灰色。カバーの色がそうだから?
いや、都会の夜、決して「アーバン」ではないがそういう色がついているように思う。

村上龍の「五分後の世界」のように、話に引き込まれ、「次は?」と先を急ぐような展開ではない。しかし何だろう。取り立てて何があるわけでもない、言ってしまえばドラマもない日常そのもの、それだけなのについついページをめくってしまう。

そしてクライマックス。
タイトル、そして冒頭から始まるカウントダウン、これの意味を知る。
最後の数ページ、念を押すようなフレーズの繰り返し。
読み終えた時、この繰り返しが効果的であったことを改めて知る。
スパイラル。ねじりが過ぎると、支える力がなくなると、必然的に破綻する。
そう、破綻する。
それは建築物だけに非ず。人も、人と人との関係もまた。。。

地理的にも馴染みのある土地での物語。
読み勧める上で、少しだけではあるが話に入り込むアドバンテージとなった。

吉田修一 講談社 2004年7月15日 初版1刷 ISBN4-06-212482-3


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
吉田修一 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。